1、病態生理
糸球体毛細血管壁の透過性亢進のために尿中に蛋白が漏出する病態である.
<蛋白の漏出のメカニズム>
血管腔からの蛋白質の喪失は、血漿浸透圧の低下と静水圧(毛細血管にかかる血圧)の上昇を起こし、間質腔と腹腔に水分が貯留する原因となる。
血管内水分量の減少は、レニン-アンギオテンシン系を刺激し、抗利尿ホルモンとアルドステロンの分泌を促す。そして、尿細管におけるナトリウム(Na+)と水分の再吸収
を促進させることで、血管内水分量は増加する.水分の貯留は浮腫の増強をまねく。
血管内水分量の減少は、凝固タンパク質による血液濃縮と乏尿をきたして、凝血塊と静脈血栓が形成される.尿中への免疫グロブリンの喪失は、感染の危険性を高める。
ネフローゼ症候群は、糸球体透過性を変化させるさまざまな因子が引き起こす疾患である.
ネフローゼ症候群は、原因によって原発性と続発性に分類される。
ネフローゼ症候群は、臨床所見と腎組織の顕微鏡的検査所見に従って分類される.臨床的分類に基づいた疾患の型によって、疾病経過、治療、予後が異なる。
症状は慢性的となることがある.再燃を起こすこともあるが、可能性は加齢とともに減少する。治療効果が得られない場合の予後は悪い。